本研究では,放電加工もしくは電解加工などにおいて,一列または複数列に配置された多数のピン状の電極の長さを制御しながらxy方向にスキャンすることで,三次元の微細形状を創成する方式を開発することを目的とする.以下では,この方式をドットマトリクス方式と呼ぶことにする.工具電極の製作時間を大幅に短縮することができるという特徴を持つ。本稿では,まず,ドットマトリクス方式を提案し,その原理と特徴について述べる.その後,プロトタイプを用いて放電加工を行った結果について述べる.
ドットマトリクス方式加工ユニットの概念図を図1に示す.ドットマトリクス方式の加工ユニットは,超小型電極送り機構,電極ホルダ,ワイヤ電極より構成される.電極送り機構により駆動される複数のワイヤ電極の先端は,ホルダにより拘束され束ねられている.この加工ユニットはNC工作機械のような主軸およびテーブルを持つ機構に取り付けられている.本方式ではこの突き出し量を連続的に制御しながらスキャンすることで三次元形状加工を行う.この一連の動作はインパクトプリンタで印字する場合に似ている.異なる点は,プリンタはピンの突き出し量が一定であり,紙面に二次元の形状を印字するが,本方式の場合は突き出し量を連続的に制御するため,三次元の形状を創成することが可能となる. | |
ドットマトリクス方式による加工の概念図を図2に示す。形状を変えながら上から降りてくる黄色いブロックが工具電極である。図1に示した電極送り機構で長さを調節することで、先端プロファイルを形成する。下には被加工物が置かれている。被加工物には工具の先端プロファイルが転写されていく。 |
Fig. 2 Concept of dot-matrix machining |
システムの構成を図3に示す.加工ユニットが形彫り放電加工機(三菱電機製M35KC7G)に取り付けられており,このxy方向の運動を利用して走査放電加工を行う.加工ユニットおよび電極先端の位置決め装置はパーソナルコンピュータ(80386,16MHz)により制御される.加工ユニットの外形寸法は,約55×55×80mmである.6台のインチワーム構造を持つ電極ダイレクトドライブ機構が放射状に配置されている.クランプと電極ガイドの間隔は22mmである.電極は,電極ガイド部では760μmの間隔で一列に配置されている.それぞれの電極送り機構はベースプレート上に絶縁物をはさんで固定されており,それぞれの電極は絶縁されている.放電加工機の電極主軸を上下させずに位置決めを行うため,楕円カムを用いて電極先端の位置決めを行った.位置決め可能な範囲は0.5mmである.設定分解能は10μm,カムの同一位置における繰返し位置決め精度は約1μmであった.
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Fig. 3 Appearance of system |
試作した加工ユニットを用いて三次元形状を加工する手順について説明する.加工手順を図4に示す.走査方向はxy,加工方向はzとした.加工手順は,以下の通りである.
これらの手順を設定したxyの範囲に対して繰り返すことで,三次元形状を加工する. |
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Fig. 4 Machining process |
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加工形状の例を図5に示す.同図(a)は設定形状であり,加工ユニットの走査範囲は4.2×4.2mmである. |
(a) Designed shape |
(b) Measured shape |
Fig. 5 Result of machining 3D shape |
給電方式には、同電位給電方式と分割給電方式の2種類がある。同電位給電方式は、全ての電極を並列に接続し1台の電源から電圧を供給する方式である。分割給電方式とは、各電極間を絶縁しそれぞれの電極に電源を1台ずつ接続する方式である。 給電方式による放電の分散状態の観察結果を図6に示す。 同図(a)の同電位給電方式では、電極1のみに放電が発生している。同図(b)の分割給電方式では、電極1から6へ順に電圧を印加した。したがって、放電が強制的に分散されている。放電の頻度は同電位給電方式の方が高かった。したがって、加工速度を増加させるためには同電位給電方式が適していると考えられる。しかし、同電位給電方式では放電が集中しクラックが発生しやすくなる。そのため、仕上げ加工では強制放電分散が可能な分割給電方式が適していると考えられる。 |
(a) Equi-potential power |
(b) Divided power |
Fig. 6 Observation of discharge dispersion |
本稿ではドットマトリクス方式による三次元形状創成加工法を提案するとともに,プロトタイプを製作し,加工実験を行った.結果をまとめると以下のようになる.
公表文献
Last modified on12/04/2001 at 11:12:22 by Katsushi Furutani