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豊田工大Release

素粒子奨学会 第16回中村誠太郎賞を受賞
~数理物理学研究室 鈴木良拓PD研究員

2022.05.20

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鈴木 良拓 PD

豊田工業大学 大学院工学研究科 鈴木良拓 PD研究員(数理物理学研究室)が素粒子奨学会 第16回中村誠太郎賞を受賞しました。

  • 受賞論文 「Topology-changing horizons at large D as Ricci flows」

受賞論文の概要

 我々は、高次元時空におけるブラックホールが質量の大きさに応じて変形していく様子を、高次元極限と呼ばれる解析手法を用いて調べました。特に変形途中でブラックホールの表面が繋ぎ変わる「トポロジー転移」と呼ばれる現象に着目した研究を行いました。この転移の存在はこれまで数値計算(コンピュータによる近似計算)による傍証が得られていましたが、転移点において物理量が無限大になってしまう点(時空特異点)が生じるため、無限大を扱うことができない数値計算では直接転移の存在を示すことは困難でした。我々は高次元極限を用いた解析計算(厳密な式変形を用いた理論計算)の結果、数値計算によって予想されていた通り、無限大の発散を伴うトポロジー転移が起きることを理論的に示すことができました。

研究背景

keisai202005_figure.jpg 普段、私たちは空間3次元と時間1次元を合わせた4次元時空を認識していますが、万物の究極理論とされている超弦理論はこの世界が「高次元時空」であることを予言します。これは、空間が縦?横?高さの3次元に加えてもう一つあるいはよりたくさんの未知の方向への広がりを持っていることを意味しています。高次元時空の存在は、実際に観測されている時空が4次元であることと矛盾しますが、これは余分な空間次元が非常に小さく丸まっていてマクロなスケールでは見ることができない、というメカニズム(時空のコンパクト化)によって解消できると考えられています。例えるならば、細長い筒が遠くからは厚みを持たない一本の線に見えてしまうようなものです。これまでさまざまなコンパクト化の方法が提案されていますが、最も単純な方法は余分な方向をどこを切っても同じ断面になるように筒状に丸めてしまうものです。この方法はカルツァ-クライン(Kaluza-Klein)コンパクト化と呼ばれており、そのような筒状の構造を持った時空はカルツァ-クライン時空と言います。
 カルツァ-クライン時空にもブラックホールは存在することできますが、質量の大きさによって、筒の方向に伸びて巻き付いたブラックストリング相と巻き付かずに局所化したブラックホール相の2種類の静的な相が存在することが知られています。数値計算によって、これら2つの相は質量を連続的に変化させることである質量(臨界質量)を境に移り合うことが示唆されていました(右図:5次元カルツァ-クライン時空の場合)。これは二つのガラス板の間に水滴を垂らした時に、水の量によって板の両側に分かれたり、板の間に橋をかけたりする現象とよく似ています。高次元時空ではこのような相転移現象が他の様々なブラックホールにおいても普遍的に存在することが、同様の数値計算によって示唆されています。ところが、数値計算では二つの相の形状が近づいていくことは確認されましたが、肝心の相転移直上の様相は解明できていませんでした。これは臨界相の前後でブラックホール地平面の幾何学的形状が不連続に変化する「トポロジー転移」が起こること、それによって臨界相の時空が無限大の発散(時空特異点)を含み、数値計算が困難になることが原因だと考えられていました。

研究内容

 我々は時空次元を非常に大きいものとみなして近似を行う「高次元極限」を用いて、このブラックホールのトポロジー転移の問題に取り組みました。高次元時空における重力理論では、大きい空間次元を持つほど、ブラックホールの複雑なふるまいがいくつかのより単純なふるまいに分離していく傾向を持ちます。高次元極限はこの性質を強調することで、高次元ブラックホールに特徴的な物理現象の解析を容易にします。

 本研究では、高次元極限における重力の方程式が、数学の幾何学の分野で研究されている「リッチフロー方程式」(※)に帰着し、リッチフロー方程式の解がブラックホールのトポロジー転移に結びつくことを示しました。また、実際にKaluza-Klein時空中のブラックホールに対応するリッチフロー方程式を解いてトポロジー転移を起こす解析解を得ました。この結果により、これまで数値計算や既存の理論計算では解明されていなかったトポロジー転移の存在の有無について肯定的な回答を与えることができました。

※ リッチフロー方程式:幾何学において図形の形状を調べるために使われる。2002、2003年にロシアの数学者ペレルマンが幾何学の未解決問題であったポワンカレ予想を証明する際に英国威廉希尔公司_世界十大博彩公司-【首页】@な役割を果たした。

原著論文リンク

"Topology-changing horizons at large D as Ricci flows", Roberto Emparan and Ryotaku Suzuki, Journal of High Energy Physics 07, 094 (2019)

中村誠太郎賞について

 原子核理論、宇宙物理理論を含む「広い意味での素粒子理論分野」における若手研究者の応募論文の中から最も優れた論文を選定し、その著者を顕彰する目的で、2006年度に素粒子奨学会によって創設された。

素粒子奨学会