計算力学
原子シミュレーション、第一原理計算、分子動力学、離散動力学、粒子法
数値計算とAIで変形と破壊のメカニズムを解明する
- 教授 椎原良典
- 計算力学研究室
研究背景と概要
自動車や飛行機、医療機器など、私たちの社会を支える機械構造物は「壊れないこと」が大前提です。ひとたび予期せぬ変形や破壊が起これば、それは重大な事故や人命に関わる問題につながります。では、材料はなぜ壊れるのでしょうか。
近年、高性能な材料が次々と開発されていますが、その一方で、材料の破壊の仕組みには未だ解明されていない点が多く残されています。例えば、水素によって鋼材が突然脆くなる現象のように、「なぜ壊れるのか」が十分に理解されていないケースは少なくありません。こうした現象の多くは原子レベルで起こり、しかも非常に短い時間スケールで進行するため、実験だけで直接観測することは極めて困難です。
本研究室では、このような“見えない世界”に迫るため、数値シミュレーションを用いた研究を行っています。原子レベルの現象を計算機上で再現し、材料内部で何が起きているのかを解き明かします。さらに、ニューラルネットワークなどの人工知能機技術を組み合わせることで、複雑な現象の理解や予測にも挑戦しています。ペリダイナミクス、粒子法、離散動力学といった、粒子ベースの手法による構造解析の高度化にも取り組んでいます。
「なぜ壊れるのか」を本質から理解することは、より安全な社会の実現や、新しい材料設計につながります。見えない現象に挑み、材料の本質に迫る、それが私たちの研究です。
金属ガラスの塑性変形機構の解明
ガラス状の金属は強いが脆く,どのように変形し破壊に至るのかは長年の謎でした.本研究では,原子の動きを詳しく計算することで,変形を担う小さな原子集団を特定しました.独自の解析手法により,これまで見えなかった変形の仕組みを明らかにし,新しい高信頼材料の開発に役立てることを目指しています.

金属ガラスの変形素子と,独自の解析手法,原子凍結法の概念図.シミュレーションによって協調運動として塑性変形素子を抽出することに成功した.
電子論に基づく原子応力解析手法の開発
材料の強さや壊れ方を決める「応力」を,原子レベルで正確に調べる新しい計算手法を開発しています.電子の振る舞いに基づいて応力を評価することで,従来は分からなかった材料内部の状態を明らかにできます.この技術により,合金などの複雑な材料の特性を理解し,高性能な材料設計につなげることを目指しています.

ハイエントロピー合金とその原子応力.独自の第一原理原子応力計算により,合金構造によるその応力の発現機構が異なることを明らかにした.
機械学習分子動力学による大規模材料シミュレーション
AI(機械学習)を活用して,原子の動きを高精度に再現するシミュレーション技術を開発しています.これにより,従来は難しかった大規模な材料内部の現象を詳しく調べることが可能になります.材料の強さや欠陥の影響を効率よく予測できるため,新しい材料の開発や設計のスピード向上に貢献します.

Al約40万原子からなる円孔モデルとその近傍の原子応力分布.機械学習分子動力学法により電荷移動による応力場の発現を大規模原子系上で計算することに成功した.
