戦略的創造研究推進事業(CREST) -竹内 恒博 教授-
異常電子熱伝導度と異常格子熱伝導度の制御
国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)
戦略的創造研究推進事業(CREST)
「異常電子熱伝導度と異常格子熱伝導度の制御」
2018年度開始 研究代表者:竹内恒博 教授
異常電子熱伝導度の解析とそれを用いた熱流制御
金属が熱を良く伝えることは良く知られています.この事実から,伝導電子が電荷と熱流の双方の担い手にもなっていることが理解できます.しかし,エネルギーごとに伝導電子を分類すると,電荷を運んでいる電子群と熱を運んでいる電子群は,実は同じではないことが理解できるようになります.この知識を利用すると,電気を良く流すのに熱が流れ難い特殊な金属材料などを生み出せます.さらに,金属や半導体に温度勾配をつけることで発生する熱起電力は電子の移動を妨げます.通常は無視されるほど小さなこの効果を大きくする材料設計をすると,伝導電子による熱流を著しく小さくすることもできます.理論と実験を駆使してこれらの現象を解析し,『電子による熱流』を制御する指針を構築しています.
電子が運ぶ熱の流れが電場で変化する様子
異常格子熱伝導度の解析とその利用
結晶格子による熱流は,量子化された原子振動の集団運動(フォノン)の性質に依存します.また,その散乱は,フォノン同士の散乱,不純物との散乱,界面での散乱など多種多様であり,機能性熱利用材料の開発のためには,それらを制御する指針が必要です.本研究では,バネモデルでは記述できないフォノンや,不純物の振動,構造の乱れの影響などの解析を通して,熱を伝え難くする指針や,熱伝導に顕著な温度依存性を生み出すための指針を構築しています.
原子の量子化された集団運動(フォノン)と格子熱伝導度の計算と人工超格子を用いた熱流測定結果(良く一致している.)
構成能熱利用材料の開発
基礎研究により得られる知見を利用すれば,機能性熱利用素子を高性能化することができるはずです.本研究では,熱ダイオード,熱流スイッチング素子,熱電素子を研究対象として,その性能向上を目指した開発研究を進めています.熱ダイオードを高性能化するためには,熱伝導度に顕著な温度依存性をもたせることが必要です.熱流スイッチング素子と熱電素子では,熱伝導度をできるだけ小さくすることが求められます.新しい概念と特異な物性挙動を取り入れることで,既存素子の性能を凌駕する高性能素子の開発を目指しています.
開発を目指している素子群