社会科学分野(心理学)
エンパワーメント尺度の開発、エンパワーメントプロセスの解明、協働型/エンパワーメント評価
個人や組織,社会の問題解決に積極的に働きかける心の働きの解明
エンパワーメント概念の再考
エンパワーメントという言葉自体は,諸説あるものの17世紀の法律用語として公的権威?権利の付与という視点で登場しており,1950~60年ごろのアメリカ公民権運動において,その理念として用いられたことで知られています。心理学でもエンパワーメント概念は多くの研究によって発展してきましたが,その一方で研究に潜む個人主義やパワーバランスの葛藤における問題も指摘されています。こうした問題が続く背景には,エンパワーメントを個人内のものとして扱い,個人が社会に参画するパワーを得ていく過程における,組織やコミュニティとの力動関係を十分に検討していないことが挙げられます。そこで当該研究では,エンパワーメント概念を再考し,相互交流の中にある個人の変容を捉え,促す方略を検討しています。
相互的な力動の視点を取り入れたエンパワーメント
心理状態および組織(コミュニティ)状態の測定
個人の認識やスキルだけではなく,社会との関連性の中でエンパワーメントを捉え,可視化するにはどうすればよいのでしょうか。エンパワーメントを測定する心理尺度はこれまでも「心理的エンパワーメント(Psychological Empowerment)」として作成されています。しかしこれらはあくまで個人の認知や行動に焦点化したもので,他者や組織,コミュニティとの力動関係が十分に検討されていません。これまでにはなかった視点から,社会,組織,対人関係,過去経験の状況と個人の心理状態をダイナミックにとらえられる測定方略を開発することを目指しています。
エンパワーメントアセスメントツールの開発イメージ
エンパワーメント促進プログラムの開発
これまでの研究の中で,理不尽さを感じても問題がより悪化することを恐れて我慢する人が多い傾向が分かってきました。一方で,理不尽さに対して怒りを爆発させる形での表出をすることは,当事者がスッキリしても,うまく問題に対処できているとはいえないでしょう。理不尽な状況に陥った時にうまく自分を発揮して問題を解決する方略,また,我慢をしてきたことで知らず知らずのうちに内在化してしまったパワーレスな状況からの変容を促す方略を検討し,エンパワーメント促進プログラムとして構築していくことを目指しています。
エンパワーメント促進プログラムの開発